01-E
前洲のおじいが言うとった、
人間は死ぬ瞬間、物になる
今まで必死で逃げとったんが、タマ命中すると急に布人形みたいになって、地面にどさーっと落ちる
戦時中はそれが面白くて仕方なかったと。おまえらがようやっとるファミコンと変わらん、と
おじいは何を言いたかったろう
半年後の猛暑の日、おじいは棺桶の中に入った
いつも垢まみれだったのが綺麗に洗浄されて、花いっぱいの箱の中におさめられていた
キンキンに冷やされたおじいの身体はとても気持ちよく、僕はおじいの顔を両手で何度も撫でた
あんまり涼しいんで、最後にホッペで触れた。氷嚢みたいな感触がした
それを見ておかぁが益々泣きじゃくった
傍らで棺桶を覗き込んでいた弟が不思議そうに訊いた
「なぁ、これニセモンやろ?おじいはこんな人形みたいな顔と違う」
おじいはもうあの世に行ったんや。これはその代わりなんやで
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