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2005.02.27

01-E

maesu

前洲のおじいが言うとった、

人間は死ぬ瞬間、物になる

今まで必死で逃げとったんが、タマ命中すると急に布人形みたいになって、地面にどさーっと落ちる

戦時中はそれが面白くて仕方なかったと。おまえらがようやっとるファミコンと変わらん、と

おじいは何を言いたかったろう

半年後の猛暑の日、おじいは棺桶の中に入った

いつも垢まみれだったのが綺麗に洗浄されて、花いっぱいの箱の中におさめられていた

キンキンに冷やされたおじいの身体はとても気持ちよく、僕はおじいの顔を両手で何度も撫でた

あんまり涼しいんで、最後にホッペで触れた。氷嚢みたいな感触がした

それを見ておかぁが益々泣きじゃくった

傍らで棺桶を覗き込んでいた弟が不思議そうに訊いた

「なぁ、これニセモンやろ?おじいはこんな人形みたいな顔と違う」

おじいはもうあの世に行ったんや。これはその代わりなんやで

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