dialogue
「いや、最近ね。最近。……エッヘヘヘヘ』
「え?…いやいやなんなんですか。びっくりしますよ」
「イヤ最近ね、偶然ね……息子の、息子が書いてるね、ブログを発見してしまって」
「うわっ、えー!人のパソコン勝手に覗いたんですか」
「ちがうんよ。ホラ家族で共用してるんですよ。で嫁がね。何かの偶然で」
「息子さん、高校生でしたっけ」
「ええ」
「あれでしょうほら思春期でしょ。いろいろ親が知ってはならないことが」
「イヤ、まぁ…ね。偶然ログインパスワードが。うふふ」
「……で、なにが書いてあったんですか」
「まぁ。性の悩みとか。言わないですけど。あと、同じクラスの○○さんが好きとかね」
「うわー。それ、親が知ってはいけないことではないんですか」
「へへ。まぁ。でもね、あの頼りないやつが、ようやっと自立したというかね、ほっと安心したとこはありますよ」
「でもムズムズするでしょう。『お前の正しい道はそっちじゃない!』とか」
「まぁ、ムズムズします。僕に似て……やっぱりアホなのかなぁ。とか。……でもね、思うわけですよ。ああ、俺の、俺のアホアホな高校時代くらい、には育ってくれたんだ、というね」
「なるほどねぇ……そうだ。親のことは何か書いてありましたか」
「書いてはありましたが、ま、微々たるものでしたよ。寂しいことに。もうちょっとなにか書けや、ってほどにね」
「子供からすれば、もう高校生ともなれば、親ってあんまり興味の対象になりませんよね」
「そうそう」
「はは」
「寂しいもんです。まぁでもね、ある意味、息子のそっけない態度が僕にとって勲章かな、というか、」
「はい」
「瑣末なこと。ほら、尾崎豊とか。ははは。みたいに、瑣末なことに悩んだり主張したりできるような環境を作れたということがね、うれしいんです」
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